2025.04.16  プレスリリース

保育士の有効求人倍率上昇についてのコメント

  •  厚生労働省は「職業安定業務統計」によって令和6年及び令和7年(各年1月時点)における保育士の都道府県別有効求人倍率を公表した。同統計によると、令和7年の全国平均は3.78倍と令和6年の3.54倍から0.24ポイント上昇し、保育士不足が加速していることがわかる。出生数が過去最低を更新し、子どもの数が少ないにも関わらず、保育士不足は変わらず高止まり傾向である。特に保育士不足が顕著なのは栃木県(8.14倍)、茨城県(6.46倍)などの北関東で、東京都は4.81倍だった。東海北陸地方では、岐阜県(2.73倍)が1ポイントあまり改善したものの、そのほかは静岡県(6.67倍)、福井県(5.09倍)、愛知県(4.26倍)などと非常に高く、深刻な保育士不足が懸念される。
  •  保育士不足の背景には保育士の処遇に関する問題がしばしば指摘されている。政府は令和7年度予算において、保育供給体制の確保等に総額808億円を計上しているが、この深刻な保育士不足の状況を早急に打開できるとは考えられない。一方、これほど保育士の「奪い合い」が加速すると、保育士を採用する保育施設(保育所、認定こども園等)は待遇で競わざるを得ない。よって今後は保育士の待遇改善(給与はもとより、休憩、休暇の確保と負担軽減等)が進むのではないかとの期待もある。
  •  「超売り手市場」の状況は今後も続くものと見込まれることから、保育施設は「選ばれる園」として労働環境の充実を目指さなければ早晩立ち行かなくなるのではないか。また、多くの短期大学が学生募集を停止していることから新規学卒者の採用はしばらく厳しい状況が続く。そのため、無資格者を採用する園も増える可能性があり、保育の質の確保も大きな課題である。そのため、無資格者に対して資格取得を促す方策(通信教育課程等に対する支援など)や、保育士を志望する高校生らに保育士の魅力をアピールする必要性があろう。保育所は少子化に歯止めをかけるための「器」としての機能を果たす。少子化で一時的に入所児童が減っても、その「器」は維持すべきだ。翻って、保育所への入所が確実視できないと少子化に歯止めをかけることは不可能だ。今回の統計によって、子育て支援施策はマイナーチェンジではなく、フルモデルチェンジをして、大胆な政策転換が必要であることが示唆されたといえよう。

 桜花学園大学 学長補佐 教育保育学部教授 新沼英明(にいぬま・ひであき)

 

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